Parallelizm to Black Swan
「黒鳥グラジュアル」 黒川直樹 「くぁ、ふふわぁ、バリバリって、あああ、いくらかまだ眠いッス昨日ちょっと夜更かしがっていうか大丈夫です、ちゃんとパリパリってこうして出てきたっスよ、飛んで?いやーそれできたら楽ですけどココまでは電車で、ええ、ってあれあれなんだよウェブに載ってた入口と違っちゃってるじゃないッスか、しかも張り紙されてるこの入口ってひょっとしてココから大回りして反対側じゃーんマッタクどーなんってんのよーしかもなんかアッチに駐車してるワゴンの車内で白人のグループがこっち見ながらゲラゲラやってんだけどおいおいオメーらなんか注射してんのかよなに笑ってんだよコンニャロウって、ああまあとにかく歩こうか、だから今晩はそんなに暑くなくってよかったです、暑かったらいくら夜の八時前だからって月島からここまで歩くのだってけっこうきつかったし夏の埋立地って海のに匂いするんですよ、会場の入口が違ってたって知ったとき、水掻きでもあれば、滑るように、ひとりでだって、進めたかもしれないし、入口におれの姿を見つけてくれた方がいたんです、でもそうですね、空はもう諦めてる、だからせめて湖に招待したかったな、あなた、そのためには海を渡らなければならないとそれまでは思い込んでいた、待ってくれてたんだね、エレベーター、乗り込んだらそこにもう六人くらい乗っていて、ああスミマセンなんか待たせちゃったりして、それで、八月の中ごろってなにしてますか、あ、身構えないでくださいね、もちろん恋人としてとか急にそういうんじゃなくって、ええ、部屋だってふたつ取ろうと思っているしね、うん、そのころなら忘れていた歌だって思い出せているかもしれないし、今ここから離れるって、ああ、そうだよね、はまだそこまでは考えられていないって、うん、聞いていた、耳を澄ませたのはそのためだったしね、空に飢えなければそれなりにやっていける、でも僕は君を湖畔に招きたく思っていて、そうか最終日なんですね、今夜、イベントの終わりだと集客よいのかもしれないです、会場は二階、あ、どうもありがとうございます、すみませんちょっと待たせてしまって」 会場はギャラリー 「テンポラリー コンテンポラリー」 中央区月島 倉庫の二階 「そうですよね、開始二十分前じゃもう舞台近くの席は埋まってるかもしれないので少し離れたところから見ることになっても仕方ないですね、こんばんは、わたくし批評文エントリー者の黒川直樹と申します、頂戴しているナンバーは9です、はい、はい、そうでした、乗換えで思ったよ時間かかってしまったんです、便利なのはいいんですけど駅の中にもうひとつ駅があったりして地下鉄ってわかりにくかったりして、はい、そうですエントリーナンバー9なのでこの上に6を付ければそうなりますね、4と6だとその反対で、ええ、そこまでの違いがあるかとか、ほんとうに違うのかとか、別々の事柄としてやっつけてしまっていいかっていうことを、見に来た、うん、そういうところもあるかもしれない、黒川君は今日はそのまま書くのかな、いや、どうかなまだ自分でも分からないんですけど準備はしてきたんです、そっかそっか、けどたぶん、こうして9からはじまったから、このまま最後から着いてくことになるのかなってことですよね、追い掛けてここまで来た、季節だったらいつ頃がいいんだろう、昼よりは夜がいい、そうなれば私だけ可笑しくなくって誰もみんな一緒だしね、いちばん好きなのは秋から冬にかけて、そうそう、あの頃がいいのだけれど私はここに閉じ込められるようにしてさあ、うん、いつまでも悔いてばっかりじゃね、とはいえ、そうなっちゃうんだよね気を張ってないと、ここまでは、なんとか大丈夫かな、とりあえず手首を回して深呼吸してみるよ、作品がはじまるまでのウォームアップみたいなもの」 今夜は 九月十一日 あれから七年目の 「ええ、これからです、紙と筆、インクはたっぷり沁み込ませてきました、あはは、そうでした、奇しくも名前が黒川ッス、あ、どうもご無沙汰してます、忙しそうッスね、挨拶だけしか出来ないッスねーいくつか本読ませてもらって聞かせてもらいたいことが沢山できたので残念ですけれど、こないだは有難うございました、あの帯び文に痺れたっす、今夜は赤のTシャツに赤のシューズですね、このギャラリーはあちこちみんな白ですね、そういえばおれのナンバーって9だったんですよ、そうそう、ははは、繁みッスよマジおかしいんスけどホントはここにパソコン持ってきて、それで、パフォーマンスを追いたかった、でもそんなことやったら作品におかしなテンション持ち込んじゃうんじゃないかとか、観に来てる方におれのパソコンのモニタの明かりが目障りかなとかですね、あとは、そうだな、追いかけたら逃げられてしまうんじゃないか、じゃあそうか、逃げてもらいたければ追いかければいいのか、なんてこと、あれこれ考えてしまって、そうやって思い耽るんならせっかく目の当たりに出来るパフォーマンスについて集中したらいいんじゃないかなって、ええ、だから今夜はひさしぶり、囲という籠、湖畔に落ちていた羽、そうですね、9だからあと6があればよかったのかもしれないし、4でなければならないときだってあるんじゃないか、ううん、沁みたならいつか枯れるでしょう、君に連れてってもらったあの古沼の底みたいになってしまっているよ、今頃どうしているのかな、私の過ごすこの部屋も大窓ひとつあるだけであとはどこもかしこも翻る仕切りのカーテンですらも白だよ、見せたいな、見せたかったな、そして見つけてもらいかったんだなっていうところからきっと始まるのでしょう、ああ、会場が静まってきました、予感と期待それと幾らかの畏怖にギャラリーは気体、今夜はとりあえず走り書きだけはやるつもりです、午後八時四分、月島からここまでは、ええ、歩きました」 大橋可也&ダンサーズ パフォーマンス 「あ、そうそう黒川さん聞いてくれますか、なんかビルのエントランスのとこに駐車場あってそこに停まってたワゴンに白人が三人載ってたんですけど、ヤツらにすげー笑われちゃって、うん、でもここまで泳いできた、いえ、今日はもう夜も更けていく時刻ですし、だから明るくも澄んでもないから、どちらかというと、ええ、そうですね、みんな一緒です、撃ち落とされないために夜を選ぶことがあった、見ること頼りにしてると見落としてしまうときってあるんですよ、もう空は諦めました、だからここにいる、もうすぐ舞台が始まる、これが三度目でこのシリーズ最後のライブ、うん、大橋可也&ダンサーズをライブで観るのって初めてだから、どんな感じか楽しみです走り書き始めます、あと、やっぱり此処ってそうなんじゃないかって、コンクリートと白壁と黒い梁の空間だけど、きっと時間が経つにしたがって、そうなってくんじゃないのかって、それに、あれじゃないですか、灯りがなければそこって、そこって何処であったって、明るさがなかったら、そこにある誰しもがみな一様にって、あ、そうですね、はじまるみたい、薄暗くなってく」 ブラックスワン開演 沈む沼、髄が管。 また堕ちたらもうそれからは鳴けぬからと諦めた、あのときの羽ばたき何処いってしまったの。耳を澄ます。ええ。源は濁るわ。沁みてた印矩が切れたからといって、水掻き、それくらいあったならね、意思を欠く谷間じゃ憎しみの対象にならないし、こっこっこ、滑稽、コケーッコッコ。 あ、よかった。 あの子はまだ、歌えるみたいね。 溶けない厚い氷 そのような舞台の 四方の壁 はじめ、音も音楽も聞き取れないフロアは、でも、とても静か、もしかして生き物が息を潜めているのかもしれませんね、水掻きのある誰か、段々に敷かれた座席と抽象絵画のような四壁、午後八時七分、どこかに毒や罠がありますか。 床 ところどころに 平 置 き さ れ た パ イ プ 椅 子 数えで四つ 床 追わなければ逃げさせてあげられないじゃない、奈落のように吹き抜けの天井、逃げなければ追わせることさせてあげられない、その、黒から闇へのグラデーション。 踏み入った。 板状だったパイプ椅子を折るでも咥えるでもなく、そこに挟まるでもない貴方、あれ掴み組み立てたの貴方でしょう、今そこで、組み立てたように見えましたので、私はこれからなにかが始まるのかもしれないと予感しましたし「組み立てられた」とは、組み立てられようとしていたことと、やがて再び折り畳まれてしまうこととの兆しですから、あなたが上手、やってきて、私たちの座り並ぶフロアを初めての恋人のように緊張させたとき、私はこれから何かが終わっていくこと忘れたらいけないのだ、甘やかした未来に別れ、ところで繁みはそれでどこからが繁みか。 離水の音。 それだけ耳にしたところで、私には聞こえなかったよ、君、澄んでいるかそれとも濁りであるかどうか。 午後八時十一分 わたしたちはこうして 眼差しを棄てる そういう黙視として われわれになる 格子状に組み合わされた 天井の黒い梁 左の入口から男が入ってきた 上下ベージュの衣服 それが稀有でしたからもうそれだけだってよかった、それだけで澄めばよい沼だった、だってそれでみんな済んでしまう繁みかもしれなかったのだから、文脈より文法を重んじるというかそうでないものは間違いとして哂われてしまう駐車場というか、ワゴンでなく、バンでなく、白人の運転手に拠るでもなく、あそこになにを停めたらいいんだろうと惑わせる現代において「どう振る舞うべきですか」という息の根を、上手、いま現われた役者が懐に忍ばせた匕首があったとしたら、そいつに仕留めてもらえはしないだろうかと期待したからって髄を管にしちゃうだなんてね、誰の入れ知恵よ。 つぎに現われたのは女 両手 そう思わせる その身振り いや、それはひとつの期待であり気体、組み立てられた椅子、組み臥された白猫がフッフと毛並みを荒げるの無視しながらいまでは二人の役者がフロアに並び立ち、誰もいなかった舞台だったのにね、まず一人、そして二人、組み立てられた椅子に腰掛けて振り返り見つめるその一人の裸足、パイプ椅子、入口のほうを見ればそこに意思の欠けたコッキである。 男は床に激しくのたうつ 沈まずに居るにしたって風が強くって木々のなかった夜の淵、そっと、そおっと、できるだけ柔らかく辿る月明かりのほころび、ほら、こおろぎよ、そこには音楽でなく音がありました。 「耳が濁るよりはよいね」 もう殻は爆ぜ塵になってしまったけれど、きよらかなよこしまに、きみ、いま湖面に、こぼれ落ちた時とおなじ丸みとして孤絶するのですか。 それから男は直立 舞台に響く 役者の背景として挿れられる エンジン音 それと 空調の音 見上げたら飲食店の看板に蔦がからまっていたのだから、もしかすると水面には照明だけでなく星月もまた明るかったかしら。手触りなくして実感を得ることはとても難しいよと、そう記した手紙をあなた、交わした約束を破るように千切りましたね。 胴部を叩く女 照明は 小さな暖色系のライト それだけ ぼんやり 浮かびあがる 舞台 私はふたつの瞳孔をカタキとして閉じるところからはじめてみれば目視と黙示のどちらを選ぶつもりかと迫られたような気持ちがして、すこし焦れたのです。ところが空を見ていると地を探れませんので、わたしは月島からホールまでマンホールがいくつあったか私にはわからなかったということはここで嘘なく言わなければいけないね。 「はい。駅からは歩きでした」 明日はそうするか決めかねているという表情で彼は言った。 天井から 白色のライト 舞台に 注ぐ 空の登場 天の発見 空間の拡張 位置的な物差しとして 上方の露呈 闇を読ませる梁 消えた まだ座られない はいずって パイプの椅子は それから 飛び跳ねる 男 私は茶色の服にしました。わたしは黒。それらは身につけると他の誰かになった気にさせることがある。だから服を脱いだときにもひょっとしたら自分じゃない誰かになれるかもしれないと思うたび私は生ぬるいベッドに耽りたくなって困らせられちゃってヤぁねぇっていうほど嫌いじゃないのよ、むしろどちらかというと好きなほうだったりするし、月島までは電車でした。樹があって風がなかったらそこは別のどこかだったろうか。音のする音楽だってきっとあって、だけれど貴方は今日までそれを耳にしたことがなかったから嘘だってじょうずにつけなくて、それにウェブに載っていた入口からはフロアに上がれなかったのですって噂を隣り合った長髪の男性に小声で聞かせると、 「あんたそこで一つ悪態を垂れ、駐車場に停まっていたバンにはしゃぐ三人の白人に哂われた」 あれナんでお前それ知ってンの。 「隠し事、ううん」 そんなに嫌いじゃないのよ、ふっふふ。 ふたりの男が茶色 ふたりの女が黒色 かれらの動き ときおり重なるが それは意図されたものじゃないか 静と動、そのリズム ・四つの椅子 ・四つの人 ・四人の男女 でも本当にそうだろうか 性別は便宜的な呼称 便宜をはかるだなんていう滑稽 人とは、そもそも 誘蛾灯のように白ける自販機に効果を入れればそこで物語が立ち上がってしまうということが気にかかるからと、じき、糸くずがこびり付く役者の足裏なのだ。 「あなたは冷えてたっていうけれど」 たしかに冷たくなくたって構わないのかもしれないわね、どちらかというと私はね、それならばなにかを見るということをじゃあどう考えようかと、そんなこと妄じているうち世界が回る、廻る、周ると指される新体はこうしてコンクリートのフロアに巡るまえ、それもずっと昔に、 「マワサレタ。ブルブル。フルエタ」 仮名、かな、それとも、チラとじゃよく見えないけれど、始まってからずっと何か一生懸命に書き取っている隣の男なら、長髪だ、気取りやがってボケ、いやちょっと待って、そうじゃなくって彼ならすこし話しかけても嫌がられないだろうか、むしろ書き留める邪魔になるからと煙たがられるだろうか、いや、彼女たちだってきっとわからないことだからああやって飛んだり跳ねたりしているんだから、私だってここでコッキに挫けず試みて私の輪郭をたしかめるのだ。わたしのためのきみよ、きみのために私はここにいないけれど、きっと君のための誰かがどこかで微笑んでいるよ、そうやって懸命に書くのも悪くないんだろうけど、見えなければ耳を澄ませてみるってことも大事だったりするんじゃないかしらって突然そんなふうに私に喋りかけられたって困るだろうからいくら彼だってね、なので終わりまでは言わず、 「あの、ちょっとゴメンなさいって割り込んでしまうけれど、私たち、ここで彼女たちが演じるのを見るのって、初めてじゃないですか。それなのに、これまで見たことなかったはずなのに、ここで、始まって二十分くらい過ぎるところまで眺めたからといって、私は彼女たちを見ました、彼女たちの作品を私はもう知りました、そうコッキにできるのかなって」 ええ、そうですね。 「これって勘違いされちゃうかもしれないんですけど、私、ここで頑張って、もちろんなんだってそうだって思うんです、たとえばこれからここで見ていくじゃないですか、この舞台、作品を、見ていきますよね、これから、たぶんあと四十分はパフォーマンスが続くので終わりまで見せてもらうとして、その後でちゃんと時間作ってきっと考えてはみます、わからなくっても、わからないところはなんでわからなかったのか、わかるようになるにはどうしたらいいか、わかろうとしてもわからないならそれはどうしてかって一つ一つやってみると思います、そのつもり、でも、ウチから月島までタクシーで来たんです、それでこのビルの中庭までは歩いた、あの、そういえばサイトに載っていた場所から会場への入口が変わったのって、もしかして今夜だけだったんでしょうか、そうだとしたら、なんかそういう差異に遭えたってラッキーだなって感じる私ってポジティブですか、あとで調べてみなくっちゃ、それと役者さん、男の人はベージュで女の人はああいう衣装ってやっぱりそういう意味でしょうか、ブラックスワン、そして衣装といってもそれは普段着でっていうことの意味のフィットとギャップ、あ、けど男とか女とかじゃないのかもしれないですね、よくわからないのかもしれない、もしかしたらいまここで試されてるのって、ひょっとしたそういう慣習のことかもしれないんだ、でも、やっぱりそうじゃないかもしれないですね、気をつけたいな、そう思う私って、ポジティブなんでしょうか、つまり遅れたって引き離されてしまったってなんとしても終わりまではとにかく行ってみるけれど、はたしてそこがコッキかなって」 ええ、そうですね。 「はっきり見えるって、見えてるってことかなって」 ヴーン 空調の響き 街路を走る車の音 車の行き交い 此処でなく 向こうの出来事 此処という その自覚によって 向こうが 察知 できるけれど 天体がない だけれど、ここなら大丈夫。 「ほんとにぃ、ここで脱がなきゃダメですかァ」 ウン、そうだね、両脚をぴったりくっつけて、気をつけの格好、右手の平は水平に伸ばされ額にくっつけられることはなく「悶えたりするんじゃないよ、決してそんな素振り、見せるんじゃないよ」その忠告に制服を拒んだ姿態、拒んだことによって裸にされてしまったみたいなの、困った、囲った、固めた、だから気をつけの姿勢に君は身振りを征服できたんだよね、太ももの外側、添えられた手の平は誰を守るでもなく君を強いた、強いた、強いられた君が今更むずかるなんて未練を垂らす醜態は添わせた踵に封じてきたことは僕にだってよくわかるのです、そして「脱いでみてくれないか」と訴える僕を疑いたくなる気持ちもやっぱり分かるよ、だってもし私が同じようにそこにいて同じようにそう言われたら、あたし、そうやってきっと、コッキ、きっと振り回すように振り回されてたんだろうなって、今になってみればわかるんだけれどね、やさしくされたのはそんな時だった。 「だって、ねえ、ほんとよ」 耳もとで聞かされるから囁きなのですよね。それが歌になれば私だけのものでなくなってしまうかもしれない。どこまでも繁りだから先なんかほとんど見えなくて聞こえないはずの音や声がうるさくって茨に傷つけられたりもして、でもここで止まったらそれこそもう動けなくなってしまうからって無理して運転してやっとここまで来たのに聞いていた入口の在りかが違っていて、ああ、もう、どうしてこのタイミングなのって、諦めるように仰げば、うん、それって外圧や外敵に動かされているみたいに晒される喉笛ですよねピューピュー坊や此処はねピューピュー大人の縁日なんだからね、ほおら、踵をそろえて揺れてみれば案山子になった気分だから鴉のことも愛らしく見えてくるだろうアイツらすぐ君のところにやってきてよいところもそうじゃないところもみんな突付いてくれるから君はもうすぐ還れるよ「うん」じゃあやってみる、でもここに来るの初めてだから、やってみる前に入口だけ教えてくれたら嬉しいです、ここからじゃ上に行けない、あ、あとオジサン、指笛だったらぼくのが上手だねピューピュピュー。 反復される運動 いつのまにか密室でなく 外へ投げ出された彼女 外出によって それまでの空間を 密室とした彼女 ところが それでも われわれは 交錯する 交錯しているのに 四 の 椅 子 座られず ただそこに天板として 着衣はヌードを妨げない クロス、クローズ、クローズド すぐそこで転がってるのは どう見たって それは裸 ところが三秒後に役者は 着膨れした中年 それだって 六秒後には着痩せした若者 ・そのものであることの強い ・そのものではないものへの詰り ・そのものではないということの示し 作用する 攪拌 作用される 「ときどきそうやって煽てるよね」 粘りつくように動き 役者は二人が男 二人が女 現在 九月十一日 あれから七年の 午後八時二十八分 これ見始めた、おれ 「ねーいま何処らへん?」 んっと、ちょっと待って 意図しなければすべて無意識とされてしまいがちです。でも、もう、それはいいかなって。諦めてるっていうか、すごい深い繁みだったって、こうしてなんとかここまでは這ってきて、果てた草臥れに仰向けにされたら空が覗けてホッとすることだってあるし、それに、無意識と無意味ってきっと、違うことであるからって、うん、床がコンクリートでよかったんです。これがもし絨毯だったら、やわらかくってたぶん、ああ、それに、毛糸って良いモノだったら静電気は防いでくれるけどそうじゃないシロモノなら埃たくさん吸い込むことになっちゃうしィィィヴイイヴイイィヴィィィィンとエンジン音が消え跡に倒れし男の足裏に糸くず、こんなタイミングだったら足裏に付いてればそれがどんな糸くずだって全部みんな文学にされちゃうっていうのも可笑しい話だよねってニットのクオリティについて話し始めると嫌われちゃったりしてね、ううん、アタシ嫌われ慣れてるから結構ダジョーブあはは、それにほら、苔むした肢体を覆う喪服が玉砂利に埋もれ、椅子の女、触れる、振り返り、また触れる。
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| 2008-12-17 08:57
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